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「冷静に考えれば分かるのに、混乱している貴方の不安に付け込んだんですよ、そんな男です。立花ってやつは」
不安に付けこむ……。
思い当たる所がありすぎた。きっと、彼は最初、眉を怪訝そうに寄せていたから、わざとあんな質問したり、揺さぶったりしたんだ。
――でも、藤宮さんから守ろうと動いてくれているのもきっと、嘘じゃない。
確かに、俺の心は見てくれない様な部分は多々あるけれど、でも。
『榛葉でいい、ではなく榛葉がいい』
そう言ってくれたんだ。不器用なあの人が言葉を選んで。
「君、良い人ぶって立花を信用するのは止めなよ。――まあ、信じるのは君自身が決めることだけど、さ」
まだ俺は呆然としていた。
まだ、信じられない。
本当に、どうしたらいいのか俺には分からない。
「し、信じるっていけないことなんでしょうか」
不安で胸が押し潰されそうだ。
言葉をくれないあの人の、たった一言だけで俺は判断しようとしてるのか。
「確かに、俺は人の言葉を信じて裏切られたり、我慢したりしてきたけれど、でも、でも、だからこそ、立花さんが言ってくれた言葉の重さを熟知してます。
い、一度ぐらい信じてみても良いんではないでしょうか」
自分から手を伸ばすのは、ずっと怖かった。
父も母も俺が要らないんだって気付いてからは、会話さえ怖かった。
だから、俺はゆかりさんたちみたいに、誰かと心と心を触れ合える様な仕事がしたかった。
お互いの言葉を聞いて、暖かくなりたかった。
立花さんとも――。
俺が飲み込んだ言葉、
貴方が言えない言葉、
ゆっくり、何度でも言葉を発しながら伝えていきたい。
駄目でも、何度でも。
そう思えたのは、――本当に昨日の言葉からだ。
「せめて立花じゃなければ、貴方のその直向きさを評価してあげたいんですが」
立花さんの冷酷さって、結構有名なのかな。
「あーゆう裏の仕事ばっかしてる奴って信用できないよ。まあ、愛想笑いしないあたりまだ怖くないかな」
白湯も全部飲むと、手持無沙汰でリューさんがテレビを付けてくれた。
実は――立花さんが居る時はテレビも見なかった。
「あ」
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