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「ずっと外にトラックが停まっていた。菊池と俺の部下が近寄ると、逃げた――怪しい。本当に、此処から一歩も出るな。良いな」
「立花さん……」
「私も居ますよ」
菊池さんが、立花さんの背中から顔を出すと、にこにこといつもの様な、余裕のある笑顔でわらってくれていた。
「携帯も此処ですね。はい。くれぐれも知らない番号は出ないでください」
まるで小学生になったかのように、俺は菊池さんにもリューさんにも守られてしまっている。
これでも、26歳なのだけれど。
「俺からの連絡はすぐに出ろよ」
立花さんは、俺の頭を一度抱けなぞると、すぐに玄関へ踵を返した。
「え、あの、立花さん、何処へ」
帰って来たと思ったのに、また靴を履いている。
「仕事が残っているから戻る。今日はもう帰らない」
「すいませんね。社長、貴方の顔だけ見たいと言うので」
二人がドアを閉めようとするので、俺は服の裾を掴んだ。
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