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煙草に火を付け、ライターをポケットに仕舞った立花さんの手に――俺は手を伸ばした。
立花さんは目を見開いたけれど、俺の手を振り払わなかった。
だから俺はその骨張っていない指を握って震えを押さえる。
圧倒的な恐怖を植え付けるこの人が傍に居る――ソレがなんでこんなに安心するのか分からない。
「藤宮さんが拳銃を手に入れて、コンビニを荒らしている理由は何なんでしょうか」
「――お前は何も知らなくていい」
「此処に閉じ込めておけば、知る必要はない?」
「……そうだ」
言わないのは、俺の為だとか、俺を守るためだとか、少しでも優しい言葉をかけてくれたらいいのに。
この人は、そんな素っ気ない言葉で俺を此処に縛りつけようとしているんだ。
「俺は、貴方がもし藤宮さんに拳銃で――と思うと怖いです」
「ふっ 馬鹿馬鹿しい」
「藤宮さんは――話しあえば何とか分かりあえないのでしょうか」
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