119 / 348
九、騙し合い、嘘と愛を囁く。
Side:立花優征
俺が会いに行った二時間後、榛葉は忽然と姿を消した。
「すいませんでしたッ」
「――無能」
土下座せんばかりに謝るリューに舌打ちしてしまう。
リューがシャワーを浴びている間に消えてしまったらしい。
監視カメラには、部屋を飛び出す榛葉の姿が見えた。
そして、――会社に届いたのは、一枚のDVD。
宛先も宛名もない、茶色の封筒に一枚のDVDが入っていた。
俺はソレを見ながら、気づけば見ていたパソコンを叩き割ってしまっていた。
叩き割り、踏み、――唾を吐きかけた。
「菊池」
「はい。漸く、ですね」
にっこり嘘臭い笑顔を貼りつけた菊池は楽しそうに笑う。
「リュー、佐之助の密売ルートを閉じることはできるか」
「えっ?」
「出来るか、と聞いている。この無能」
「……当てはあります」
「やれ」
その為に利用したのに、失敗したら本当に無能だと殴るだけでは済ませない。
今度こそ、今から仕掛けるこれで、――終わらせる。
ともだちにシェアしよう!