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九、騙し合い、嘘と愛を囁く。

Side:立花優征 俺が会いに行った二時間後、榛葉は忽然と姿を消した。 「すいませんでしたッ」 「――無能」 土下座せんばかりに謝るリューに舌打ちしてしまう。 リューがシャワーを浴びている間に消えてしまったらしい。 監視カメラには、部屋を飛び出す榛葉の姿が見えた。 そして、――会社に届いたのは、一枚のDVD。 宛先も宛名もない、茶色の封筒に一枚のDVDが入っていた。 俺はソレを見ながら、気づけば見ていたパソコンを叩き割ってしまっていた。 叩き割り、踏み、――唾を吐きかけた。 「菊池」 「はい。漸く、ですね」 にっこり嘘臭い笑顔を貼りつけた菊池は楽しそうに笑う。 「リュー、佐之助の密売ルートを閉じることはできるか」 「えっ?」 「出来るか、と聞いている。この無能」 「……当てはあります」 「やれ」 その為に利用したのに、失敗したら本当に無能だと殴るだけでは済ませない。 今度こそ、今から仕掛けるこれで、――終わらせる。

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