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第125話

誘う――なんてしたことなかったからこれで合っているか分からないけれど、俺は小さく舌を出してみた。 「榛葉っ!」 がっついてきた藤宮さんは俺に馬乗りになると、カメラに背を向けて、無精ひげだらけの顔を近づけて来た。 舌が――口の中に入ってくる瞬間、その生温かさと鼻息の荒さが肌に感じて寒気がする。 その代わり、さっき立花さんが俺に飲ませようとしたカプセルを舌から取り出して、噛んでから中の粉を取り出す。 うううう。 こんなに、他人の体温を感じる舌って気持ちが悪いものだったのかな。 立花さんのキスは、荒々しいけれど、鼻を掠める香水とか息とか体温まで気持ち悪いとは思わなかった。 そんな余裕さえないぐらい、奪われるような荒いキスだったから? ドンっと胸を突き飛ばされながら、唇が離れた。 「苦い――。何か今、俺に飲ませたりしてないよね? 榛葉ちゃん」

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