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第128話
「榛葉さん」
ハッと我に帰る。
泣きそうになっていたと気づき、すぐに飲み込んだ。
目だけ動かすと、扉の前で佐之助さんが立っている。
穏やかなのに、静かな圧力を感じるのはなんでだろうか。
この人は怖いと素直に思う。立花さんと違った怖さだ。
「藤宮が突然眠ってしまって、うんともすんとも言わなくなった。これは貴方の仕業かな」
「……知りません」
良かった。やはり睡眠薬だったんだ。
ってことは、これで暫くは藤宮さんに変なことをされる心配はないってことだ。
「弱々しくて、優征に守って貰うだけの子かと思ったけれど、これは甘く見ない方が良いって事ですね」
パタンと扉を閉めると、入って来たのは佐之助さんだけだった。
黒服の人も藤宮さんも居ない。
「先ほどのビデオ撮影から、もうすぐ一時間が経つが、藤宮が動けないなら――誰がいいかな。それとも、部下全員の相手でもして貰おうかな」
全員――。
先ほどの黒服の護衛の様な人達だけでも何人も居たのに。
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