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第129話
「嘘だよ。君はゆかり姉さんの大事な大事な――客人だったらしいからね」
「っ」
「でも、財産目当てで老人に近づいて優しい言葉をかけるロクでもない人間じゃないって証拠もないしねえ」
困った困った、と佐之助さんは顎を触りながら俺を見る。
「優征にも守って貰うつもりで身体で取り入ったのかな? 綺麗な髪と身体をしているしね」
髪を引っ張られると頭がピリリと痛んだ。
でも、この人、俺を浚った目的は、ゆかりさんの財産目当てなのだったら俺を早く始末するはずだ。
なんでわざわざ一時間に一回、俺の事を恥ずかしめて立花さんに送ろうとするんだ?
この人の目的と意図がまだよくわからなくて不気味だ。
「なんだい? そんな可愛い顔で睨んで」
「貴方の方こそ、ゆかりさんの財産目当てじゃないんですか? だから立花さんと敵対しているんですよね」
「財産目当て? 私がか?」
「だって、ゆかりさんの家を訪ねてくれる人は居なかった。唯一、俺だけが離し相手だって言ってくれてた。あんな、優しくて凛として美しい女性を――山奥の屋敷で一人にさせるなんてっ」
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