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第135話
前から、ぺたぺたと裸足で走っている榛葉の姿が見えた。
何も身に纏っておらず、長い髪を靡かせて、必死で此方へ向かって来ている。
「……この馬鹿がっ」
後ろばかり気にしている榛葉は、俺に全く気付いていなかった。
「榛葉!」
大声で叫ぶ。
すると、前を向いた榛葉が、俺の顔を見て顔を破綻させた。
ぐちゃぐちゃに、綺麗な顔を歪ませて。
「絶対に二度と、俺の腕の中から離してやらないからな」
上着を脱ぐと榛葉の肩に羽織らせて、抱き締めた。
一発、頬を殴ろうかと拳を作ったが、榛葉が唇を震わせ声が出ないぐらい顔を真っ青にしていたので――保留にしといてやる。
「ど、して」
震える唇が、身を削る様な微かな痛々しい声を絞り出す。
「ど、……して来たんですか」
「来ないわけ、ないだろう」
「俺、俺……」
涙を溜めても、その涙を零したくなかったのか、喋るのを止めて唇を噛む。
その痛々しい顔を撫でながら、唇触れようとしたら顔を逸らされた。
「榛葉」
「あの、口、汚いですっ」
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