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第139話

この状況で、立花さんは一向に引こうとしない。 あの銃が本物であるということは、菊池さんが撃たれているのだから重々承知の上だと思っているのだけれど、どうしてそんな余裕を持てるんだろう。 佐之助さんだって、わざと立花さんを挑発して此処におびき寄せて何が目的なのか分からない不気味さがある。 この人が本当に何を考えて行動しているのか、俺には予想がつかなかった。 「俺は、堅気じゃないからと姉さんの葬式にさえ呼ばれず、知らない間にお前みたいな若者に姉さんの大事な会社も屋敷も奪われて惨めで憐れな老いぼれだ」 「何を言いますか。ゆかりさんには、不良を止めなさいって散々言われてたのに一度も聞かないで、気まずく会えない状況になったのは貴方の方でしょう」 「お前はだまっとれ」 菊池さんを睨むと、今度は後ろに居た二人の黒服の護衛が拳銃を取り出した。 吐きそうで、足を踏ん張っても立花さんのベストを掴んでしまうぐらい俺は、怖がりで弱くて、馬鹿で誰かに翻弄されてはただただ泣いているガキみたいな奴だ。 「お前が、ゆかり姉さんの意思を継ぐというのなら、今此処で誠意をみせんかい」 低くうねる様な、威嚇するような声に俺は身体が強張る。 けれど、立花さんは眉ひとつ動かさずに、ただただ真っ直ぐに佐之助さんを捉えている。 「誠意が足りなかったら今、此処で、お前を消す。そこの花嫁も勿論無事ではないな」 言葉はきっと嘘じゃない。 拳銃だっていつでも引き金を下ろせる体制で、後ろからも前からも囲まれている。 それなのに、立花さんは表情を変えない。 「その前に確認しておくが、お前が、藤宮をそそのかし拳銃を売り、調子に乗った藤宮が榛葉を守るのは自分だとナイト気どりのストーカーを始めたのは、俺の誠意を見る為か」

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