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第141話
「別に。今の暮らしで満足なら――影で支えればいいと思っただけだ」
「頭が足らない葉山のヘアサロン、安く店舗を貸してあげてましたもんね」
「えっ」
「騙されても、ストーカーされても、不幸の中生きてきても、笑えるならば俺がわざわざ出ていく必要はない」
「それは、ゆかり姉さんとの約束が違うんじゃねえかい」
「俺がこいつを幸せに出来ているとは思わないからな。ぐたぐた俺の話はもういい。お前こそ、俺達を引き合わせる為に藤宮を利用したような口ぶりだ」
「さあ? それはどうかねえ」
――!
風船が割れるような、空気を震わせる音と共に火薬の匂いが当たりに立ちこめる。
佐之助さんが天井目掛けて、発砲したんだ。
突然のことに周りの黒服の護衛たちでさえ一歩退いている。
「ゆかり姉さんの葬式に行けなかったのはお前も一緒だろ。優征。ゆかり姉さんの意思を継ぐつもりがあるなら、そこの花嫁を守る意思があるなら、嫌いなもんにも土下座するつもりで守らんかい!」
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