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第144話
「気でも狂いましたかー?」
菊池さんが首を傾げて尋ねても、佐之助さんは笑い続けている。
立花さんも佐之助さんのその奇行に俺を再び背に庇った。
「面白い、やはりゆかり姉さんは最後まで、ゆかり姉さんだ」
腹を抱えていた佐之助さんはゆっくりと拳銃を袖口に仕舞った。
「数々の非礼は、まあ詫びん。ただ、自分の目で、お前をゆかり姉さんの全てを譲る人物に値するのかを見たかった」
「なんだと?」
「まさか、香港のルートを凍結するような、圧力に圧力で対抗してくるとはな」
「お前」
立花さんは佐之助さんに近づいていくと胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるなよ! そんなことで榛葉を危険な目に合わせたのか!」
「っ」
立花さんがこんなに大声を上げることなんて見たことが無くて息を飲んだ。
「ほー。お前、そんなに人間らしく感情を表せられるのか」
「お前は俺を品定めするために、こんな茶番を起こしたのかと聞いている!」
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