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第148話
話を聞いて欲しかった。
藤宮さんはちょっと心が折れているだけで話せば分かってくれるって思っていた。
俺も誰かに話を聞いて欲しい、――誰かと話したいって、まるで孤独を埋めるように仕事を楽しんでいた。
だから、彼の寂しさとか悩みとは理解したいって。
「榛葉、君は騙されてるよ。この先、ずっとこいつの言いなりの生活じゃあ、君の優しい心は折れてしまうんだ。君は俺が守るしかないんだよ」
「藤宮さん、ちがっ」
「違わない!」
「ひっ」
チクリと首筋に痛みが走った。
ぴくりと赤い玉が、剃刀と首筋の間に浮かび上がる。
「君がいつも笑顔で健気に生きていたのを、俺だけが知っている。俺だけが、、……俺だけだよ。榛葉をこの男から守るのは。守れないと言うならば、これ以上君が辱められない様に俺がこの場で君の全てを貰うよ」
「藤宮さん」
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