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第160話
「……脅すネタはいくらでもあるが、まあそうなる」
勿論、手放す気は一ミリもない。
全くない。
「俺、あの、俺、でも、俺、その」
言葉が纏まらずあたふたする榛葉は、真っ赤になったり真っ青になったり。
それだけでは、おれは榛葉が何を考えているのか読みとれなかった。
その唇が紡ぐのが、俺への愛になるように。
「俺は、お前の安っぽい愛の言葉が欲しい」
榛葉が俺へ愛情を持ってくれるなら。
唇を指先でなぞり、セクシャルな意味のない、ただただ触れるだけの優しいキスを落とした。
「――ふぇ」
その途端、榛葉は大粒の涙を零す。
「何だ。こんなキスでさえ文句があるのか」
流石の俺の傷付いたというか、苛っとしたら榛葉は首を振る。
「い、いつも、俺の言葉を聞きたくないって塞ぐような乱暴なキスしかしないから、優しく触れるキス……嬉しくて」
ポタポタと流れる涙に、気づけば俺は榛葉を胸に引き寄せていた。
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