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第165話

心が見えた気がした。 一瞬だけ、立花さんが俺に近づいてくれた気がした。 それなのに、俺は恐怖を奪って欲しくて、立花さんの熱を欲しがるのは、今まで俺に酷いことをしてきた立花さんの行いと何も変わらない気がして。 自分だけ楽になろうとして浅ましいとさえ感じる。 「脱がせてやるが、俺は動けないからな」 心なしか立花さんの声が弾んでいる。 この人が俺を抱くのは――俺に好意があるからだと漸く分かった今、ちょっとだけ照れくさい。 俺は、首筋を剃刀で切られただけなのに一日、色んな検査をしたので検査服だった。 お腹の部分で結んでいた紐をほどけば、簡単に前が開き、肩から落ちていく。 するすると肩から逃げて行った服を、立花さんは乱暴に引っ張り床に落とした。 膝立ちで立花さんの上へ跨り、俺の胸が丁度立花さんの顔の正面ぐらいにある。 「腰がもう揺れているぞ」 立花さんが、両手で下着を下ろしてくれながら、短くそう言う。 恥ずかしいし、早く欲しくて強請っているのがばれれしまう。

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