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第169話

灼熱の――という表現があっているのか。 身体の中に入ってくる熱に俺の身体が熱くなっていく。 「ひゃっ」 灼熱に貫かれて、身体が――身体の心や中に火傷ができていく。 この熱に捕われて、この熱に全てを奪われて、全てを食いつくされてしまってもいい。 怖かった。 家に帰ると荒らされた痕跡があるのを見て、家に帰るのが怖かった。 火事の責任を葉山さんに押し付けられて――絶望したあの夜。 剃刀を当てられて撮影されて、いつまで続くのか分からないと震えたあの時。 藤宮さんの拳銃が立花さんの足を貫いて、床に流れていく血。 血が――固まると赤黒くなって。 どうか忘れさせて。 めちゃくちゃに、頭の中に侵入して、内側から俺を壊して侵して。 俺も貴方をもっと見る。 恐怖を払拭する為に貴方を利用してしまったけれど、もっと貴方を理解する。 歩み寄るから。 伸ばした指先に、貴方も指を絡めて応えて欲しい。 奥に当たって、息をするのも苦しかった俺に、貴方は優しく髪を払い口づけをした。 そんな優しい姿――もっと頂戴。

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