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十一、蜜月と嘘月
一週間が経った。
俺が簡単に騙されて藤宮さんに連れ去られたあの日から一週間が過ぎた。
立花さんは、もう杖さえあれば自由に歩き回れるし仕事にも行けるようになっている。
でも――。
「行くぞ、榛葉」
「わ、はいっ」
朝、車までの間と、車から降りて社長室へ向かう間、立花さんは俺が支えて一緒に歩く。
杖なんてその時は意味を持たない。
実はもう歩けるんじゃないかなって思うんだけど、わざと立花さんが俺の手助けを借りたくてそんな嘘を吐く訳も思えないし。
それに、立花さんに頼られて、立花さんを支えて歩くのは俺もちょっと嬉しかった。
「今日、寒田が来るぞ」
「うっ。俺、部屋に閉じこもってても――?」
「駄目だ」
寒田さん、俺が藤宮さんに騙されてのこのこ連れ去られたことを、すっごく怒ってて怖いから会いたくないな。
この前だって一時間正座して説教されたし。
社長室に着くと、給湯室から珈琲の香りがした。挨拶をすると菊池さんも挨拶し返してくれて、とっくに出勤していた。
パソコンを立ち上げて、溜まった領収書の束を引き出しから取り出す。
俺はまだ、立花さんに言えてない変化がある。
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