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第171話

『婆さんから預かっていたお前宛の通帳だ』 二日間入院して、マンションに戻った夜、ベットに先になるか、今からどうなるか、ドキドキしていた俺とは違い、立花さんがテーブルに置いた通帳。 中を確認しろと言われて見たら――今まで見たことが無い様な大金が入っていた。 『それで新しく店を持てるだろ。土地なら貸してやるぞ』 『無理です! こんな大金頂けません。俺、――』 『俺に言うな。俺はお前にそう言うように頼まれていた。もうお前にこれが渡っても文句を言うような馬鹿な親族は居ない』 『……』 恐る恐るもう一度通帳を開いたら、やはり身に余る大金すぎてすぐに閉じた。 信じられない。腰が抜けた。 立花さんはそれ以上、何も言わないし聞いてこなかった。 美容師に戻るという選択肢が頭になかったわけじゃない。ただ俺はシザーケースを取り出して手入れしてみようか触れたら――。 剃刀を見て手が震えてしまったんだ。

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