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第172話
その夜、俺は恥ずかしながら魘されて、銃声に怯える夢を見てしまった。
『榛葉、榛葉!』
夜中、立花さんに揺さぶらて起きると、立花さんがホッとしたようにペットボトルの水を差し出してくれた。
『すいません。怖い夢を見てしまって』
『……大丈夫か?』
『はい』
立花さんは、俺が寝るまでずっと覗き込み様に座っていて、それはそれでちょっとプレッシャーだったけれど、隣に誰かいるといるという心地よさに安心してその日は眠れた。
でも、言えない。
剃刀が怖いなんて、美容師としては致命的だし。
だから、今、立花さんの第二秘書として一日中ほぼ一緒にいるこの環境が安心している。
今まで怖かったこの状況が今は、安定剤なんだ。
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