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第173話
それ、は突然だった。
「社長」
菊池さんが立花さんを呼んで、ほんの少しだけ廊下へ席を立った時だ。
俺には聞かれたくない話――物騒な話や難しいけれど複雑な話は二人でこそこそとするのはよくある話で、いつものことだった。
別に俺が聞いてもよく分からないし。
俺がすぐ怖がるから、立花さんなりの配慮なんだろうけど、つまりはあくどい商売もしてるってことだ。
珈琲片手に、ソファに沈むながらテレビなんて見てサボろうと思った時だった。
テレビは丁度、主婦向けのランチ特集とかそんな娯楽番組だった。
その番組をぼーっと見ていたら、テロップが流れて『緊急速報』と文字が現れた。
『緊急速報』
『元警官で、コンビニ強盗発砲事件の容疑者、取り調べ中に自殺』
その文字に、俺は思わず珈琲を落として目を見開いてしまった。
立花さんが俺にテレビをあまり見せなかったのは、きっと報道番組で彼の名前が出ない日は無かったから――それに今気づいた。
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