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第174話

Side立花 「藤宮が、自殺?」 煙草に火を付けながら思わず聞き返す。 「はい。取り調べ中にトイレに立った時に自分の衣服を首に巻いて、らしいです」 「取り調べ中はトイレにさえ観察がつくはずだが――」 消されたとしか思えない。 佐之助が消したとは考えにくかった。 あいつは本当に俺を試しただけで、今はあっさり引退してばあさんの屋敷に移っている。逆に密売ルートを遮断できなかったのを俺が尻拭いして足を洗わせたようなものだ。 「これ以上はもう報道はしないでしょうね」 「……まあ、俺にももう関係ない」 榛葉さえ無事ならば。 すると、社長室から何かが床にぶつかる音がした。 すぐに飛び込んで見ると、榛葉が床に四つん這いになって、零れた珈琲を拭いていた。 「榛葉?」 「すいません、意外と熱くて手を離してしまいました。すぐに拭きますので」 「手は大丈夫か?」 菊池がすぐに雑巾を持って来たので榛葉の手を掴む。 すると、榛葉がひゅっと息を飲みのが分かった。

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