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第179話

Side:榛葉 『今日は寒田が来る』 立花さんが毎朝そう言うのだけれど、寒田さんはオオカミ少年のように来ない。 これは立花さんが俺を脅かす嘘なのか、寒田さんが連絡をしてきたものの来ないのかどちらかは俺には分からなかった。 ただ、一昨日、俺は自分から立花さんを誘った。 体が疼いたとか、シたくなったからではない――。 怖かった。隣で立花さんが俺を守るように抱いて眠ってくれなければ、あの夜は怖かったんだ。 藤宮さんがあまりにも突然で不自然な死。 彼が生前執着したのは、俺だったから。 彼が謎をいくつも抱えたまま亡くなったのも、突然過ぎる死も、死んだのに何故か俺の頭の中から離れていかない恐怖も。 立花さんに朝まで、酷くされてもいいから抱かれて忘れてしまいたかったんだ。 それにいっぱい出したら、俺、眠くなってしまうし。 なのに。 立花さんは、あの夜、すっごく優しかった。 思い出しても、頬が真っ赤になってしまうぐらい。

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