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第182話

お酒の雰囲気を壊されたのが嫌だったのか、立花さんは不機嫌に寒田さんに突っ掛かるけれど、寒田さんは怯まなない。 珈琲を俺に差し出し、自分も対面しているソファに座ると長い脚を組んで俺を睨んだ。 「止めときなさい。庇っても榛葉君には無駄ですよ。自分を軽んじてる。自分に価値がないと思っている子はまた誘拐されるんじゃないですか」 「だから、榛葉を怯えさせていいのは俺だけだ」 バチバチと、二人の視線から火花が散っているのは俺が弱いからだ。 寒田さんの言っていることは最もだし、俺が自分に価値があるなんて思えるはずない。 今、俺に価値があるのは、ゆかりさんの莫大な財産の一部を頂いたってことぐらいだ。 寒田さんは、俺の命さえ危なかったあの事件の事を本当に怒ってくれてるんだ。俺を心配してくれてる。だからそんなに怖いんだから、俺が悪いし、俺ももう二度とあんな馬鹿な真似しようと思わない。 「無駄です。榛葉くんが変わらないのならば、ね。そうだ、弱い榛葉君に良いモノをあげましょう」 寒田さんが取り出したのは、黒い首輪だった。

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