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第188話
「お前が癒せるとでも思っているのか、優征」
「ふ。そこまで驕れるか」
ただ、今はまだ本当の榛葉と心が触れ合っていないような自覚はある。
「だが、榛葉を今は追いつけるな。今日のお前はやり過ぎだ」
「はあ。よもや優征に注意されてしまう時が来るとは」
寒田は珈琲を飲みながら溜息を吐いていたが、もうそれ以上は口を噤んだ。
今日の榛葉の態度を見て、色々合点がいくことがあったのだろう。
俺もそれ以上は言わなかった。
榛葉がこの家に来る前は、こんな感じだ。
多く緑と語ることはなかったし、共通の話題も無かった。
緑が気を使って話を振って来ても、興味が持てないし面白いとも思わなかった。
俺の世界は、榛葉を此処に浚ってきた日から目まぐるしく変わって来ている。
「榛葉」
ノックもせずに部屋のドアを開けると、榛葉は窓に両手を付けて空を見ていた。
まだ猫の様に細い月で、面白見もない形なのに、だ。
だが、その横顔は、息を飲むぐらい綺麗だと思う。
「緑はもう返したぞ」
「えええ!?」
目を見開いて、榛葉が俺の元へ駆け寄って来た。
「お、俺、首輪したままですよ! 本当に帰ったのですか!?」
「ああ。今日はお前に態度も悪かったからさっさと帰した」
「これ、どうしよう。明日、こんな首輪で仕事なんて行けないし」
真っ青になって首輪を触る榛葉は、抜けないか強く引っ張ると、『イタッ』と手を離した。無理矢理引っ張っても電流が走るらしい。
「緑には首輪のパスワードを聞いてやる。それよりも、風呂は?」
「えっと、お先にどうぞ」
急に表情を硬くした榛葉は、意外と単純な所があるなと口角が上がってしまう。
何を今度は隠しているのか、暴いていく会話は楽しい。
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