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第191話

音もなく落ちたズボンを見て、くっと小さく笑われた。 「見えてるぞ」 「――っ」 あの事件の時に剃られた毛が漸く少しずつ生え出してきた。 元から薄かったし気にしていなかったんだけど、生え始めの短い毛が下着から飛び出して間抜けな姿になっている。 自分でも気づいていてたけれど――剃刀を見ると怖くて剃れないし、いつまでも何も生えていないのも格好悪いし。 「お願い。見ないでください」 「俺がお前の部分で見てはいけない場所は無い」 横暴だ。この人、最近は柔らかくなって、時々目元が綻んだりして優しくなってきたと思ったのに。 そんな横暴な所は相変わらずなんだ。 「恥ずかしがるお前が悪い」 「俺だって不可抗力なんで。俺もちくちく痒いんですからね!」 ズボンを上げて、落ちているベルトを拾おうとして、その腕を捕えられた。 「抱くときに、俺もちくちくするのだが」

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