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第224話

ただ、榛葉が俺の今までの行動を全て許して、受け入れて、俺を好きになったのだろう。 もっと恨めばいいのに、もっと俺を罵るべきなのに。 あいつは、そうやって今まで周りの人間を許してきた。 自分だけ傷付いて、周りを許してきた。 俺はそれがどうしても歯がゆくて、苛々したんだ。 もっと周りを疑い、嫌い、警戒し、賢く生きればいいのに、と。 「分からん。俺はアイツをどうしたいのか、わからん」 このまま、両思いでめでたしめでたし。 馬鹿で人を疑う事を知らない榛葉が傷付くたびに、俺が慰めて癒しておしまいか? 「素直じゃないですよねー」 珈琲を差し出しながら菊池が俺の顔を見て笑いやがった。 「なんだ」 「社長は、榛葉さんの前では格好つけすぎて本音を隠してるから、どっちもどっちですよ。本当に身体でしか会話してないんだから」

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