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第225話

「本音を言わないアイツが悪い」 「本音が言える状況じゃないのが悪いですよ。最近はちゃんと対等に扱っているんでしょうね」 菊池の人聞きの悪い言い方に苛々が募ったが我慢する。 そんな事でいちいち目くじらを立てている場合ではないからだ。 「でも、社長は榛葉さんのお陰でちょっぴり変わりましたよね。本当に――良い影響ですね」 クスクスとまるで俺の親父のような、慈しむ視線に複雑な気持ちが湧きあがるが――それも飲み込む。 「一時期、榛葉さんの借りている部屋が次々と荒らされる事件があったでしょう?」 煙草を吸っている俺に、菊池はそう切り出す。 過去の話だ。 「それが?」 「最初の一回目は佐之助さん側が荒らして、二回目以降は足がつかないように藤宮さんに荒らさせてたんですって。一回目で調べつくしたけど――出て来なかったらしくて」 「何を探してたんだ、あの野郎は」

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