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第229話

「立花さんは、良い人ではないかもしれないですが、悪い人ではな……なくなってきていると思います」 立花さんも俺と同じ、愛情を知らずに一人で生きてきた不器用な人。 そう気づくのに、こんなに時間がかかってしまいました。 彼は愛情が貰えなかった分、一人で生き抜く強さを見に付け、人を信用しないで力で抑えつけようとする。 俺は愛情を知らない分――自分に自信が持てなくて、誰にでもきっと良い顔をして、誰でもきっと信用して縋ろうとしてしまう馬鹿なんだと思う。 だから、立花さんは他人から見たら良い人に見えなくても、それはきっと仕方ないことなんだ。 「でもさ、顔色伺わなきゃいけない、無口で傍若無人で、人の気持ちも分からない奴より、愛情を前面にだしてくれる奥さんとか欲しくないの? 家に帰ったらハンバーグとかシチューとか作って待っててくれる奥さん」 「うーーん。俺も人と関わるのが下手だから恋愛ってもう難しいし」 「ああ、じゃあ立花優征で妥協しちゃうんだ」 「そんなっ 俺、本当に……立花さんを思うと胸がぎゅうって痛くて、笑って欲しくて、あの大きな手で髪を撫でて欲しくて……」

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