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第231話
「手紙、ですか?」
「ああ。手紙です。もし奪われたらって心配してたので俺が開封して中身を覚えさせて頂いてます」
「ゆかりさんが俺に手紙だなんて……本当に俺、話を聞いてもらったり聞くだけで自分が癒されてただけで。自分が寂しかっただけなのに」
あんな、自分じゃ一生働いても稼げないような大金を頂いて、その上、生前に俺の事を考えて手紙を書いてくれるなんて嬉しい。
自分のことを考えてくれる時間を作っていたなんて。
「読みますか?」
「はい。お願いします」
寒田さんがスーツの裏側のポケットから取り出したのは、若草色の上品な封筒だった。
綺麗な字で、『榛葉さんへ』と書かれている。
「俺はその手紙を読んでなかったら、あんなクソ生意気なガキの後見人になりませんでしたよ」
寒田さんは重々しく言い、そのまま廊下へリューさんを連れ出してしまった。
一人残された俺は、手紙を開く。
生前のゆかりさんを思い出しながら。
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