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第233話

『モデルを辞めて、彼の人生を支えようと決意して穏やかに何十年も時間は過ぎたわ。 けれどある日、旦那様が、小汚い男の子を連れて来たの。 ガリガリで、ろくな教育も受けていなさそうな、思わず鼻を摘まみたくなりそうな可愛くない子供。 目だけは私を強く睨みつけていた。 旦那様が自分の外で作った子供だから引き取りたいと言ってきたので私はその場で崩れ落ちながら泣いてしまったわ。 確かに旦那様は誇れない部分もある仕事をしていたけれど、私は大切にされていると思っていたのに。 こんな薄汚いガキに私が選んだインテリアの家の中に入って欲しくなくて、すごく汚らしいモノに見えて、その場でひっぱたいてしまったの。 今でも――今でもあの時叩いた右手が痛むのよ。 自分の一番触れて欲しくない傷を抉られて――私は私のことしか見えていなかった。あの子を見れば大切にされていなかったのは分かっていたのに。 私は旦那さまにもショックで、一人大きな邸で御世話係の菊池と、たまに来る息子のように可愛がっていた佐之助と関わるだけのさみしく穏やかな人生を送りひっそり死んでいこうと思っていた』

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