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第235話
『きっとあの子も愛情なんて知らない大人になっているでしょう。愛情を知らない大人は、他人にとっても非情になれるわ。でもそれがあの子の生きた時間が作りあげたものだから――だからもし傷付くことがあっても酷い仕打ちをされても、それは私があの子にした事。
どうか女としてもプライドであの子を受け入れられなかった私を許して頂戴。
私が悪かったの。
どうか、あの子を貴方の優しさで包んであげて。貴方も傷付いいるし自分を卑下しているけれど、貴方だからこそあの子の痛みや思いを受け止めてくれると思う。
あの子も貴方にならばと、強くぶつけてしまう事もあるでしょう。
全部受け止めなくて良いからどうか、分かってあげて欲しい。
貴方達は、まるで片割れ同士のように生まれた時から歪で、きっと一人じゃなく二人じゃないと完全になれないと思うから。
貴方に私が母から頂いた打掛けを譲ります。
幸せにしてもらってね。貴方の気持ちをあの子が理解できるようになるまで時間がかかっても、――歩み寄って欲しい』
読みながら俺は気づけば大声で泣いていた。
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