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第242話
「そ、そうなんですが、でも、俺、」
「榛葉」
とどめを刺すような言葉ではないかと躊躇したが、榛葉は俺を見上げた。
「俺は――お前より年下だからな。他の奴より二倍は伝えてくれないと分からないぞ」
それは、今朝の逃げるように吐いた言葉を懺悔するかのように。
自分の弱く情けない所を曝け出す言葉が吐けたのは、今朝、俺に本音を言ってくれた榛葉に敬意を払ってだ。
「じゃ、じゃあ」
ぽろりと憑きものが取れたかのように、榛葉は俺の方を見る。
「ちょっとだけ屈んで下さい」
可愛い。
これが可愛い生き物というものか。
言われたとおり屈むと、震える手でケーキを食べてくれた。
それが俺達の歪な今の関係を表しているんだと思う。
「美味しいですか」
「こんな上手いモノを食べたことが無い」
ついぽろりと出た本音に、榛葉は喜んだ。
「菊池さんが、初日に立花さんがケーキを好きって言ってましたもんね。煙草を吸うのに、甘いモノが好きなんてちょっと可愛いです」
「可愛い……」
「あ、すいません、生意気で」
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