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第249話
服に、苺の潰した時に滴った汁が零れてシミになっていく。
赤く色づくシャツが――じんわりと広がって行く俺の淡い思いみたいだ。
この人を幸せにするために、この人を満たす為に、俺はこの人と出会う為に生まれてきたんじゃないかって、もっと感じさせて欲しい。
不器用な感情を、もっと受け止められるほど心が強くなれば、もっとこの人が見えてくると思うんだ。
ゆかりさんの手紙を見て、俺はこの人から逃げていたことも、自分から逃げていたことも自覚できた。
見せるから――いや、暴かれたから、か。
貴方に暴かれて、全ての依服を奪われて、そこまでされなきゃ自分の本音も言えない馬鹿だけど。
――貴方の全ても見せてくれますか?
震える手で、立花さんのネクタイを引っ張った。
不器用な立花さんをもっと知りたくて。
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