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第253話

そのまま、お互いもうブレーキが利かなくて。 ソファに突き飛ばされると、立花さんの背中に手を伸ばしてぎゅっと捕まった。 うう。――愛しい。 こんなに早急に俺を快感に昇らせて。 乱暴なのに、優しくて。 すっごく胸が甘酸っぱく締めつけられる。 こんな全て曝け出して抱きつく相手なんてもうきっとこの人しかいない。 離れたくないから離れるけれど――貴方が居ない生活はきっと恐怖もないけど、温かさもないんだ。 「榛葉」 「?」 「涙」 いつの間に溢れだしたのか、立花さんが涙を優しく拭ってくれた。 言って欲しい。 いっぱいいっぱい甘やかして欲しいのに。 きっと彼は俺の弱さや、彼に依存してしまう逃げる姿勢に言葉を躊躇してしまうだろう。 だから言わなくて良い。 俺も、俺も今はそれでいい。 「欲しいです、立花さん」 立花さんの目が見開く。 「キス――して」

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