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第254話
込み上げてきた切なくて甘い思いが――彼にキスを強請る。
彼の体温が、彼の唇が、強引で力強い指先が、
欲しくて堪らない。
離したくなくて――苦しい。
「だ、駄目ですか?」
「駄目じゃ、ないが――」
余りに唐突過ぎたのか驚く彼に俺はキスを自分からした。
甘く愛しく切なく――苦しい。
キスが苦いと思ったのは俺が泣いていたからだ。
きっと俺が離れたくないって言ったら、嫌そうな顔をされるからもう言わないけれど。
それでも離れたくないよ。
もっと強くて大人になって、俺が年上だから導いてあげられるぐらい成長して帰って来るから。
もう一度、触れるだけのキスをしたら――深くて荒々しいキスが降ってきた。
俺はこのキスが欲しかったんだ。
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