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第265話
「ステーキはしっかり中まで焼きました!」
ミディアムの焼き方を読んでたらしっかりになったことは内緒で、笑って誤魔化した。
中が適度に火が通っているのがメディアムか。
でも、こんな一週間分の食費の値段のお肉は、自分で買う事はもうないだろうし、要らない知識かもしれない。
「立花さん、ご飯は――」
焚きたての炊飯器を開けようとして、テーブルであるものを読む立花さんを見て動きを止めてしまった。
立花さんが見てるのは、今日俺が見に行った専門学校や、貰って来た住宅情報誌、そしてとある講座のパンフレットだった。
ああ、俺、なんでテーブルに置きっぱなしにしてたんだろう。
高級なお肉をミディアムで焼くことで頭がいっぱいだった。
「あ、の、それ、それは――、その」
「自分で片付けておけよ」
テーブルの端に押しやると、普段つけもしないテレビを付けてそっぽを向いてしまった。
ご飯を食べるなら、消しておしゃべりして欲しいのにな。
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