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第266話

「……立花さん、ご飯も食べますか?」 「いや、ビールでいい」 答えになっていないような答えで、ステーキを並べてビールをグラスに注いでから渡すと、沈黙が生まれた。 御礼を言わないのは別にいい。 俺が勝手にしてることだから見返りが欲しいわけじゃない。 でも、怒ってるならちゃんと何をどんな風に怒っているのか言ってほしい。 「別にわざと置いていたわけじゃないですよ。ちゃんと、考えがまとまったら話そうと思って――って」 言い訳臭い俺の話を聞かずに、ナイフとフォークを持った立花さんに妙な違和感を抱いた。 「フォークとナイフが逆です」 「!?」 すぐに持ち替えた立花さんが、ステーキを切ると、なんと一口台に切った方では無く本体の方をフォークで持ち上げて固まっている。 なんか、変。 こんなミス、立花さんがするはずない。 「熱でもありますか?」 俺が尋ねると、不機嫌なオーラを出して否定した。 「あるわけないだろ!」 「あ、でも」 ここにページを追加

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