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第267話
ちょっと頬が赤い気がして額を触ろうとしたら、睨まれて固まった。
「……すいません」
「しゅんって顔をするな」
「じゃあ、何に怒っているんですか」
「怒っていない!」
吐き捨てる様な、短い言葉に固まる。
でも怒っていないとしたら、拗ねてるような?
やっぱこんな良いお肉を焼き過ぎたのが駄目だったのかな。
どうしていいのか分からずにうろたえる俺に、立花さんは乱暴にフォークとナイフを置いた。
「また色々勝手に悩まれても迷惑だからはっきり言うぞ」
「はい」
「そ」
そ?
立花さんの顔が、険しくなる。
「そのパンフレットはどういうつもりだ」
「パンフレット?」
住宅情報誌のことではないとすると、専門学校のパンフレット?
でもこれは何度か見せて、立花さんも目を通してくれていたのに。
俺が、不機嫌な立花さんの目線の先のパンフレットを見て、フォークを指先からぽろりと落としてしまった。
そうだ。
これは、――着物の着付け講座のパンフレットだ。
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