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第277話
「優征ね、君のお陰で本当に変われたよ。ありがとう」
「そんな! 俺なんて何も」
「逢えば分かるよ、君も惚れ直すんじゃないかな」
「……ほ!?」
最初から惚れています、なんて言えなくて真っ赤になって薔薇のゲートを歩く。
逢いたいと言ってしまえば、簡単に会えるんだけど、タイミングが難しいんだ。
せめて介護士の資格を取れてからって思ってたけど、でもそんなに時間を開けたら立花さん俺の事なんて忘れてしまなわいかなっとか。
「ハサミが怖かったって言ってましたが、克服できました?」
「は、・・・・・・はい。まだちょっと怖い時もありますが、皆さんと会話してたら少しずつ大丈夫になってきています」
「そうですか。じゃあ、優征を坊主にでもしてやってください。今までの恨みで」
「恨みなんて、何もありませんよ」
扉に到着して、インターホンを鳴らす。
そんな俺に寒田さんが意外そうに顔を覗きこんでくる。
「恨みしかない?」
「恨みなんてないですって!」
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