こんな時に身体が火照る感覚に、胸が、心が――支配されていく。 「お、お元気でしたか？」 「――お前に会えなくて元気に見えるか」 不機嫌そうなその言葉に、寒田さんが小さく笑うのが分かった。 直球な言葉に視線を足元に落とすと――車から菊池さんが転げるように降りてきた。 「もうー。社長の運転粗すぎる。車の中で遺書書こうかと思いましたよー」 「遺書を書く余裕はあるのか、菊池」 菊池さんが憔悴しきった顔でやってくると、俺達を見て首を傾げた。 「何をしてるんですかー？　入らないんですか？」 「さっきからインターホン鳴らしても応答が無くて、その」 「私が鍵持ってますよー。待ってて下さいね」 菊池さんが徐に鍵を開け、足で蹴り破るとその音にビビったのか漸く階段の方から足音が聞こえてくる。 ･･････この廊下、俺が浚われた時に歩いた記憶がある。 「菊池さん、菊池さん」 「うるさいねー。依頼しといて客人を無視するとはお前らどんな常識が頭の中にあるのー？　死ねばー？」 笑顔で毒を撒き散らす菊池さんに対し、佐之助さんの側近さんが顔を真っ青にして縋ってきた。 「佐之助さまの様子がーーっ」