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第286話
Side:立花 優征
『た、立花さん、どういう事ですか! 俺、俺だって怒っちゃうんですからね!』
一年前、仕事の後、携帯を見たら榛葉の着信でいっぱいだった。
俺の家から出て行って数日でこんなに着信を残すのは――事件か。
そう思って慌ててかけ直したら、榛葉は物凄い剣幕で早口で俺に詰め寄った。
「なんだ?」
『なんだじゃありません! 俺のアパートの前に、いかつくてサングラスが怖くて――貴方の会社で見たことがある人がこっちを見てました! 監視なんて――そんなに俺が一人で頑張ろうってしてる気持が信じられませんか!?』
「……っち」
榛葉には社員なんて全部同じゴリラにでも見えてると油断していたのだが、ちゃんと見分けていたか。
「そんなに俺が頼りないですか? 俺がどんな気持ちで貴方の家から出たと思ってるんですか――」
今にも泣きだしそうな声でそう言われてしまえば、俺にはもうどうにもしてやれることはない。
追いかけても、監視しても、監禁しても怒るのは、――同じ目線で隣に居たいから。
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