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第288話

「立花さん」 車を駐車場に止め煙草を吸っていると、榛葉が出てきた。 真っ青な顔で、俺を見上げる。 白い肌も、女みたいな大きな瞳も、大袈裟に真っ青になってくるくる変わる表情も、言葉にできない感情を妖艶に雰囲気で伝えてくるその妖しさも。 一年ぶりのせいか今すぐ俺の胸の中へ掻き抱いてしいしまいたい。 「終わったなら帰るぞ」 「佐之助さん、もう長くないみたいです!」 血相を変えて榛葉が言うが――やはりそれは俺には理解できない。 「お前を誘拐したり火事やストーカーで追い詰めた奴だ。自業自得だろ?」 「でも、――俺をゆかりさんと間違えて何度も何度も呼ぶんです」 「ふん、惨めな最後だな」 煙草を半分も吸わず、灰皿に押し付けると――俺は聞かないといけないことがあった。 「帰るとするが、お前はどうする?」 「え」 「帰るのは、お前の家か俺の家か。お前が決めろ」

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