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第298話

「ありがとうございました。これで、なかなか死ななかったあの老いぼれも、漸く眠れると思います」 寝室から俺達が出て行くと、すぐに菊池さんも飛び出して、そう捻くれた言い方をする。 「菊池さんは、本当に佐之助さんを気にかけているんですね」 俺が言うと、菊池さんは片眉を上げて斜め上に視線を泳がせる。 「うーーーん。佐之助さんは俺の最初の主人ですからね。彼に会わなければ、私は、坊主のくせに人妻ばかり手を出す色ボケに成り下がっていたでしょう」 坊主・・・・・・? 菊池さんは元はお坊さんだったのかな。 きっと彼の人生も波瀾万丈だったに違いない。 「もう少し早く、彼では無くゆかりさんに仕えていたら、きっと私は聖人君子になれていたのになー。彼の元に長く居すぎたなー」 「ふふ。菊池さんらしい」

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