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第299話

「ありがとうございます。本当に貴方は――優しすぎますね」 菊池さんの言葉に素直に笑みが零れる。 その言葉は、前は自分を良く見せるために言われていた言葉だったから複雑だったけれど、今は違う。 これが俺なんだ。 だから、嬉しいと素直に思えた。 「榛葉は、強いからな。こう見えて」 「貴方のせいで鍛えられましたよね」 「五月蝿い。今のは社長の俺に対して忠誠心が無いな」 立花さんは捲し立てるように言うと、怒っているような冷たい声で言う。 「暫く謹慎してろ。会社に暫く来なくて良い」 「立花さん!」 「パソコンにお前が出来そうな仕事は時々送ってやるから、そのじじいが死んだら俺に報告。それまで会社に来るな」 「立花――」 なんて酷い言い草なんだ、と思わず服の裾を引っ張ろうとして、止まる。 菊池さんが穏やかな顔で立花さんを見ていたから。 「貴方にしては短気過ぎる上に、軽い処罰ですね」 「ふん。榛葉との再会にお前が周りに居ると邪魔だからだ」 「分かりました。仰せのままに――」

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