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第314話

「五万以上で、欲しいモノ……」 突然言われても、困る。 それでなくても、俺の為にキッチンをリフォームしたり、キングサイズのベットにしたり、妖しい玩具通販で買ってきたり、月一で信じられない豪華な食材が家に届いたりするのに。 「俺が榛葉の願いを叶えられない訳はないのだから、言え」 ……もっと素直に言ってくれたらいいのに。 「じゃあ、駅からのバスの最終が遅いから」 「分かった。車だな」 「ちがっ! 自転車です!」 自転車なら高いのは五万以上するだろうし。 「夜道は危険だから俺か、緑か菊池が迎えに行けばいいだろう」 …あの。 俺、貴方より一個年上ですし。 今年で28ですから。 「……俺、そんな立花さんの気持ちだけで十分です」 値段じゃなくて、もっと優しい言葉とか欲しい。 「榛葉……」 「立花さんっ」 「また立花さんって名字で呼んでるぞ」 甘い空気が一変。 優征の顔が不機嫌になった。

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