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第316話

「じゃあ、――今日行った家のおばあちゃんが持ってたもので言ってもいい?」 「ああ。勿論だ。言え。今すぐ言え」 俺は、髪を切った後薦められて入ったあの暖かい空間を思い出して顔を破綻させた。 「炬燵」 「……」 その三文字で、優征さんの端正な顔が一瞬でギャグ漫画みたいに歪んでしまった。 「や、高すぎるよね。それに置く場所ないし」 うちの家具はアルマーニで全部統一されているし。 和室なんてどこにもないし。 しゅんと項垂れてしまう。 俺はお婆ちゃんに育ててもらったっからお婆ちゃんっこだから、和風な家の炬燵とかすっごく好きなのに。 「お前が欲しいモノを俺が手に入れられないわけないだろう。オーダーメイドでも今から急がせれば正月には余裕だろ」 「普通で! 普通の炬燵でいいから!」 オーダーメイドの炬燵なんて想像できないって。

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