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第321話
「え、え、ええええええ!」
優征の肩越しに見たリビングは、いつものテーブルが壁側に寄せられ、10畳の畳とともに炬燵が用意されていた。
炬燵布団が、絶対に優征の好みとは思えない花柄ピンクだ。
しかも、こたつの上にエルメスのお皿に乗せられた蜜柑。
絶対、蜜柑を乗せる籠がどこに売ってるか分らなくて適当なお皿に乗せたんだ。
「天然木で作ってある。二人並んで座っても狭くないぞ」
「並んで座るんですね」
「ところでワインとおせちは合うだろうか」
マイペースにどんどん言われても、全く俺には会話についていけていない。
けど、降ろして欲しいな。
「熱燗作ってあげますから下ろして」
いそいそと下ろしてもらうと、暖かいこたつの中へ足を入れた。
きゃー!
めっちゃ暖かい!
天然の木様!ありがとう。
「榛葉、熱燗は?」
「無理。炬燵無理。俺、今からコタツムリ」
炬燵に全身入れて、顔だけバッと出してそう言うと、優征が顔を背けた。
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