333 / 348

第334話

むっとすると、困ったような泣きだしそうな顔をした。 カレーの良い匂いがするのに、何か失敗でもしたのだろうか。 「榛葉」 強い口調で言うと、榛葉が覚悟を決めたようにドアから出てきた。 「お、お……かえりなさい」 「っ」 もじもじとエプロンの前を必死で抑えながら、 何故か榛葉はフリフリのエプロン以外、何も身に付けていなかった。 「お前……」 「ふ、服を着たら怒るかなって思ったけど、やっぱこれ恥ずかしいです」 今にも泣きだしそうだ。 だが、 寒田に頼んだメモに俺はエプロンなんて書いてないはず。 あいつが勝手に、こんなフリフリの白いエプロンを入れたのか。 そして榛葉は勘違いして、素直に着たわけか。 「や、やっぱり似合わないですよね。俺もそう思います」 「……」 「こ、これで良かったでしょうか?」

ともだちにシェアしよう!