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第336話
Side:愛沢榛葉
久しぶりに泣いた。
「……すまん」
珍しく立花さんが謝っているのに、俺は泣きながら焦げた鍋を洗っている。
エプロンもどちらのか分からないもので濡れて、乱暴に胸元を引っ張っり、直接舐めたり弄ったりしたせいでヨレヨレになってしまっていた。
「もう普通に服の上から着せてください」
せっかくの食材を無駄にしてしまう、涙が止まらない俺を、一瞬目を丸めた立花さん頷く。
「ああ。たまにで我慢する」
「し、しないです! もうしないです!」
「――お前も甘い声で鳴いたくせに」
「意地悪ですからね! もう知りません!」
真っ赤になってそう叫ぶと、立花さんの顔がゆるんだ気がした。
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