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第4話

「あらら~……こんな場所で先生と生徒が卑猥な行為をしているなんてね。しかも、まさか……まさかの《名前負けのアリサちゃん》が……こんな場所で先生といけない事をしているなんてね~。この世界での人生最後の日に、いいもの見せてくれてありがとう!!」 「あ、赤城……く……っ……」 「でもね、残念でした……君が大好きで大好きで堪らない先生を―――生かしておく訳にはいかないんだよ……つまり、邪魔なのさ。ということで……おいで、オレの可愛いウサギちゃん……っ……邪魔者の先生を始末しろ」 このような状況だというのに―――日が暮れかけ雨が降りしきり普段よりも明らかに薄暗い雰囲気に包まれている放課後の美術室の扉を蹴破った張本人である赤城はニコニコと微笑みながら此方へと歩いてくると呆然としている俺 の目の前でピタリと足を止めるとジロリと蛇のように鋭い瞳で猫山を睨み付ける。 先ほど、俺の尻穴にピタリとくっついて吸着していた【インキュバス】は赤城が扉を蹴破って乱入してきた時に怯えているかのように瞬時に細長い形(おそらくだが)へと変化すると―――そのまま俺のアナルが隠れ家だといわんばかりに中へと深く侵入していってしまった。しかし、不思議と痛みや不快感はなかった。 それよりも―――今は赤城から【可愛いウサギちゃん】と言われた存在の方が気になる。ニコニコと愉快げに微笑みながら赤城と共に入ってきたのはクラスメイトの兎耳山だ。しかし、普段とは明らかに様子が違う。乱暴だったとはいえ快活だった筈の彼は見るからに生気がなく無気力で、まるで人形みたいにボーッとしつつ右手に閉じてある状態の黒い傘を持ち、左手には外してある自前の腕時計を持っているのが分かる。薄暗くて分かりづらかったが、それは以前―――兎耳山が高級品なんだと自慢していた腕時計だという事はかろうじて理解できた。 チッ……チッ……チッ…… 腕時計の秒針が刻々と時を刻む音が―――静寂に包まれている美術室の中に響く。 【時間ダヨ、時間ダヨ―――ウラギリ者の首をはねる時間サ……ウラギリ者に死ヲ……ッ……!!】 そして、急に兎耳山が大事にしていた腕時計は意思を持っているかのように彼の頭の上へも飛び跳ねつつ移動すると、まるで女の子がつけるカチューシャのように本来の用途通りの腕ではなく頭に巻き付いた。すると、徐々に腕時計のバンド部分がウサギの耳の形のように変化していき、遠目で見る分には―――ウサギに見えなくもない姿へと変化していくのだ。 だが、形が変化していったのは―――何も兎耳山が自慢していた筈の腕時計だけではなかった。右手に持っている黒い傘も―――徐々にその姿の変化させていく。 それが最終的にどんな形になるのか察知してしまった俺は―――慌てて、今みたいな非常事態でさえ顔を崩さず飄々としている猫山を庇うために移動しようとする。この際、裸だから恥ずかしい―――とか、アナルに【インキュバス】が潜り込んでしまったから恥ずかしい―――などと言っている場合ではなさそうだ。 黒い傘から徐々に姿を変化させていき最終的におかしくなってしまった兎耳山の手に収められた物―――それは、黒く禍々しい鎌だったのだ。

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