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第15話
「___で、今度こそちゃんと俺の質問に答えてくれるんだよな?」
「当然ですよ……私は貴方様の教育係ですから___などというふざけた態度はここまでにしておくとして、アリスガワ……まずは何が一番聞きたいのだ?」
正直に言って、この《ミラージュ》という場所に半ば強制的に連れて来られてからというもの__頭の中には様々な質問が浮かんでいた。
「なあ、猫山__お前は何故……生徒だった俺を手にかけてまで、このミラージュとやらに連れて来たんだ?」
そう言った所で、俺は途徹もなく後悔してしまう。頭の中に浮かんだ疑問の取捨選択を間違ってしまったような気がしたからだ。《ミラージュとはどんな所なのか》とか《これから俺はどのようにして振る舞っていけばいいのか》とか__過去の事ではなく未来になすべき事を猫山に質問しても良い筈なのに__。
「それは、お前が……」
「それは、インキュバスのおにいさんが……お父上の目にとまったからだよ。ネコン・ヤマン術師のせいじゃない……すべては変態で好色でクソなじじいのお父上のせい__そうだよね、ネコン・ヤマン?」
「……っ……チ、チカ……様___そんな……何故、ここに!?ダイイチキュウで……お戯れの筈では?」
ふと、どこからか愉快そうな少年じみた男の声が聞こえてきて俺は慌てて辺りを見回した。パッと見た所では誰もいないように見えたのだけれど__少しすると周囲に置かれている小瓶やら何やらが激しい音をたてつつ順々に割れていく。書類やら巻物に至っては__またたく間に炎に包まれて、どんどんと燃えていくのだ。
「ん~……オレが探してた優太くんも想太くんも見つけたんだけどさ再会するには、まだ時期が早過ぎるんだよね。一番の楽しみは最後まで取っておきたいじゃん?だからさ……ネコン・ヤマン――小さい時みたいに一緒に遊んでよ?」
「お、御言葉ですが――それは……お断り致します!!」
「どうして?ああ、インキュバスと融合した淫乱なおにいさんがいるからか……なるほどね、インキュバスのおにいさんがお父上の専属愛玩人形になるって分かってても――ネコン・ヤマンはオレとは遊んでくれないんだ……それなら___」
パチンッ…………
と、今度は愉快そうな笑い声をあげつつ先程までは姿を見せなかった男が赤黒い炎を纏いながら困惑しきっている俺と猫山の目の前に現れて指を鳴らした。
その途端に辺りに浮かんでいた火の玉が一つに集まっていき、やがて__それは人間の口にそっくりな形へと変形した。
そして___、
「ね、猫山……っ__お前……何してんだ!?今すぐ猫山を離せ……っ……!!」
「うん、思ったとおり――ネコン・ヤマンの味は美味しいな。じゃあ、インキュバスのお兄さん――せいぜいお父上の性欲処理のお相手、頑張ってね~」
すぐに猫山のローブの裾を掴んで引っ張ろうとした俺の必死の抵抗も空しく、憎らしいと思っていた優しい教師の彼は【炎の口】に飲み込まれて姿を完全に消し去ってしまうのだった。
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